ラーニングコレクティブ・RAU(都市と芸術の応答体)は映画監督・三宅唱をゲストアーティストに迎え、2020年度からの3年間、土地そのものを題材とした短編映像の撮影・編集・鑑賞・議論を通じて、都市から生まれる芸術のあり様について共同で思考してきました。映像制作を専門とはせず、しかし社会の多分野で活動する国内外各地から集まった参加メンバーの短編作品は、現代の都市が拠って立つ土地を新鮮な目線で捉えようとしています。

本特集上映は、RAUの問いの一つ「土地の身振り」をキーワードとしています。三宅唱の作品における人と土地の密接な関係を捉える撮影・演出に、私たちは触発されてきました。RAUの作品と併せ観ることで、三宅唱の映画にも映り続けていた土地の姿を再発見し、また映像が可能とする広がりある時間・空間への想像力に出会う機会になりましたら幸いです。
上映は、6つのテーマで組み合わせたRAUの短編作品と三宅唱の映画からなります。複数作品を連続で観ることで生まれる思考を、映像そのものの経験と併せてお楽しみください。
(RAUディレクター 藤原徹平 平倉圭)

上映プログラム

RAU1 12/4(日)~7(水)19:50-21:30

建築物、室内、よって立つ土地。そこに居るという関わりを書き換えていく身体的/言語的運動を捉えた映像群。

荒田幸広『隅田川』(2021)3分 fig.1©RAU
川は、水を流す土地の傾きでもある。沿って歩くしかない境界で、その線を支えにする居方を思ってみる。

津久井南帆『大間木三丁目』(2020)3分 fig.2©RAU
地上の様子が変わり続ける新興住宅地を写しとりながら、その下で変わらない土地の姿を想像する。

遠藤七海『となりの高橋さん』(2021)3分 fig.3 ©RAU
隣人宅の取り壊しが、小さな振動を介して室内へ伝わってくる。同じ土地の上に暮らしていることの実感に出会う。

佃七緒『辻をはらむ』(2022)13分 fig.4 ©RAU
カメラは、出産を控えた姉の目の替わりになる。土地、家、行事を巡る中で、いつもの散歩道が変質していく。

三宅唱『土手』(2021)5分 fig.5 ©︎miyakesho
複数のスケールで捉えられる東京の「土木」。RAU2020「土木と詩」の議論から生まれた作品。

三宅唱『THE COCKPIT』(2014)64分 fig.6 ©︎pigdom,miyakesho
マンションの一室で生まれる音楽と詩。繰り返されるリズムは、やがて室内を飛び出し、東京の土地をワンカットで捉える。

RAU2 12/8(木)、9(金)19:50-21:40 10(土)19:10-21:00

土地を移動することが物語を生む。人の移動と時を超えた集団性の重なりが形作った「道」から、人の姿を見直す作品群。

Yukiho Itadani『Stien Og Fyret』(2020)5分 fig.1 ©RAU
時間を超えて重なった人の移動が道を生む。重なりは、そこを自らが行くことでしか写し取れない。

mari takahashi『ある風景の記録』(2022)7分 fig.2 ©RAU
かつて通った道を辿りながら、自分一人の尺度を超えた土地の歴史に実感を得ていく。見ることを問い直す。

なかむらまゆ 兒崎汐美 若林さち『風に潜る』(2022)11分 fig.3 ©RAU
移動に引き出された語りが、異なる土地に重なっていく。無数にある土地の物語に巡り会う。

三宅唱『ROAD MOVIE』(2022)4分 fig.4 ©︎miyakesho
黄金町に至る無人の道が、この土地に生きてきた人々の時間を思わせる。道から始めるロードムービー。

三宅唱『やくたたず』(2010)75分 fig.5 ©︎miyakesho
白い平野を行く様々な速度が、日常に物語の緩急を生む。風土は人の運動によって映る。

RAU3 12/12(月)19:10-20:30

土地を移動することが物語を生む。人の移動と時を超えた集団性の重なりが形作った「道」から、人の姿を見直す作品群。

Yukiho Itadani『Stien Og Fyret』(2020)5分 fig.1 ©RAU
mari takahashi『ある風景の記録』(2022)7分 fig.2 ©RAU
なかむらまゆ 兒崎汐美 若林さち『風に潜る』(2022)11分 fig.3 ©RAU
三宅唱『ROAD MOVIE』(2022)4分 fig.4 ©︎miyakesho

三宅唱『1999』(1999)3分 fig.5 ©︎miyakesho
15歳の三宅唱による作品。編集により変形された空間は、走り続ける少年たちの運動を引き延ばす。

三宅唱『無言日記2016』(2016)50分 fig.6 ©︎miyakesho
移動の中で撮られたスナップ映像の連結。断片はやがて都市や土地の持つ時間・空間の広がりを実感させる。

RAU4 12/13(火)、14(水)19:10-21:20

都市の姿から、折り重なる時間を見出していく。都市の向こうに控える土地を眼差す作品群。

mari takahashi『Schwedter Steg』(2021)3分 fig.1 ©RAU
都市の全てを捉えることはできないが、歩き、眼差すことから、都市との向き合いは始まる。

たかすかまさゆき『スイングビル10階』(2021)3分 fig.2 ©RAU
日々撮られた街の様子は、そこにある時間の重なりと人の集まりが、鑑賞の時間を通じて段々と伝わってくる。

永井雅也『坂の物語(わたしはどこにいるのか)』(2021)10分 fig.3 ©RAU
渋谷に重なる様々な大きな流れを写し取る。渋谷という土地が、映像の向こうに段々と見えてくる。

三宅唱『きみの鳥はうたえる』(2018)106分 fig.4 ©hakodate cinema iris
若者3人の函館での生活を映し出す。同じ空間にいる人と人の距離や配置が、映らないはずの内心や関係性を立ち上げる。

RAU5 12/15(木)19:10-21:30

都市の姿から、折り重なる時間を見出していく。都市の向こうに控える土地を眼差す作品群。

mari takahashi『Schwedter Steg』(2021)3分 fig.1 ©RAU
たかすかまさゆき『スイングビル10階』(2021)3分 fig.2 ©RAU
永井雅也『坂の物語(わたしはどこにいるのか)』(2021)10分 fig.3 ©RAU

三宅唱『Playback』(2012)113分 fig.4 ©︎decade,pigdom
都市に潜む、時空を超える道のりを映す。道を行くことで、土地が人の身振りと物語に強い必然性を与える。

RAU6 12/16(金)~18(日)19:10-21:20

ある土地で、こうとしか応えようのない必然を伴う身振り。見ることから始まる、土地と不可分な身体の在り方を捉えた作品群。

キヨスヨネスク 小山薫子『荒川平井住宅』(2021)10分 fig.1 ©RAU
土地を聴き、進む人の様子を追い続ける。他者の身体を通じて、土地の有り様に近づこうとする。

山縣瑠衣『運転の練習』(2022)6分 fig.2 ©RAU
母と娘がカメラを受け渡しながら行く道中の記録。カメラを向けるとき、私たちは何をそこに見て、進むのか。

たかすかまさゆき 佃七緒『輪/わの時間』(2022)24分 fig.3 ©RAU
長く暮らし、繰り返されながら変化していく時間を、その土地に生きる人の身振りと語りから捉える。

三宅唱『ワイルドツアー』(2018)67分 fig.4 ©︎miyakesho
山口情報芸術センター[YCAM]で中高生と共同制作。カメラで映すこと、観ること、そこに映ることで、人と空間が共に見えてくる。

三宅唱『長浜』(2016)18分 fig.5 ©pigdom,miyakesho
役者がその土地にいるということを、演技以前の姿から再考する。石橋静河が、ある海の岩場へ応える。

上映スケジュール

会場

シネマ・ジャック&ベティ
231-0056 横浜市中区若葉町3-51

チケット情報

一般1500円/シニア1200円/学生・障がい者1000円
シネマ・ジャック&ベティHPにて予約受付中